テザー(USDT)は、過去30日間でベネズエラ・ボリバルに対して約16%上昇し、690ボリバル付近から、バイナンスP2P市場で810の高値を記録した。
この動きは、ボリバルの流通量が急増している状況を映している。一方、公式銀行を通じた現金入手は引き続き減少傾向。
ベネズエラのマネーサプライは5月末時点で2兆1100億ボリバル(35億8000万ドル)を突破したと中銀のデータが示している。この指標は第1四半期だけで約69%増加。
1月以降、マネーサプライは2倍を超えた。
この加速は、従来の外貨供給と国民の資産保全需要の間でギャップが広がっていることを反映。
より多くのボリバルが希少な外貨を追う中、住民は資産保全のためにデジタルドルとしてステーブルコインへ流れている。
このレートは6月中旬にかけて着実に上昇し、ピークからはやや反落した。
公式チャネルは需要の急増に対応できていない。中央銀行の介入と商業銀行の外貨両替窓口では不十分とアナリストは指摘。
銀行はしばしば割り当て分が尽きると、ドル自動販売機の運用を停止し、企業や市民は従来の窓口で購入できない状況。
こうした公式ルートの縮小で、家計や企業は選択肢が限られる。
公式チャネルで排除されたユーザーはP2Pプラットフォームに移行し、USDTは世界最大のリテール向けステーブルコインとして取引されている。
この変化は、高インフレ国で進む暗号資産の普及トレンドとも重なる。
アナリストのヘヴァー・カストロ氏は、この価格差が日常取引に影響していると指摘する。カラカスのラ・オジャダ、エル・セメンテリオ、カティアといった市場の商人はUSDTレートをもとに在庫補充を行い、中には1ドル=1200ボリバルのレートを提示する事例もある。
同トークンは慢性的なインフレ下のベネズエラで、長年実質的なドルとして利用されてきた。
USDT自体はパリティ付近を保ち、安定的な時価総額の拡大が、ドル擬似資産としての地位を強化している。
世界ではUSDTは1ドル付近で取引されており、時価総額は1860億ドル超で、暗号資産全体で3位。
バイナンスという国内主要P2P市場では、一時810を突破し、その後約794まで下落したとトラッカーのデータは示す。
公式レートとP2Pレートの乖離は、マネーサプライが拡大する中でほとんど縮まらない。今後数週間で、中銀による新たな介入が上昇ペースを抑えるかが注目される。

