エヌビディア株価の下落が続いているが、従来の押し目買い勢は現れていない。機関投資家の資金フローは大手半導体株の中で最もネガティブであり、大口投資家が積極的な買いを控えていることを示している。
この1点が、今回の売りの構図そのものを変える。一般的に、株価が下落すれば割安感を狙う買いが入る。今回は資金がエヌビディアから流出し、同じ半導体セクター内の他銘柄へと移動している。これが押し目買いが機能しない理由である。
主要な半導体銘柄の中で、エヌビディア(NVDA)は20日チャイキン・マネー・フローで最も深いマイナス値、約-0.19を示している。マイクロン(MU)は同グループで希少な資金流入が続く銘柄である。
わかりやすく言えば、この指標は機関投資家の資金動向を表している。エヌビディアの大きなマイナスは、機関投資家が本銘柄を選好していないことを示す。
売りがエヌビディア特有であるため、他銘柄との動きには大きな違いがある。同社株は2026年に入り上昇率が約2.6%にとどまり、5月高値からも約18%下落した。
半導体指数と比べると、エヌビディアの相対力指数は52.9となっている。100はセクター全体と同等の伸びを示す基準である。
平たく言えば、半導体指数が過去半年でほぼ2倍となった一方、エヌビディアはほとんど伸びていない。つまりセクター全体が崩れているわけではない。特定の1社が崩れており、そのためにチャートで弱気転換が示され、他銘柄は上昇した。
ポジショニングもこれを裏付ける。6月上旬に、エヌビディア取締役マーク・スティーブンス氏が約100万株(約2億2100万ドル相当)を売却し、6月に複数のインサイダー売却があった。こうした構図となっている。次の焦点は資金の行き先である。
エヌビディアから流出した資金は主にメモリ分野に向かった。マイクロンは直近決算で過去最高の売上高414億6000万ドルを計上し、1年で346%増、大幅な成長を示し発表直後に株価が約15%急騰した。
また、次四半期の売上高についても500億ドル近くを見込んでいるとし、予想を大きく上回った。マイクロン株の見通しは、ウォール街で注目される銘柄の一つとなった。
ごく単純に言えば、マイクロンが製造するメモリチップはエヌビディアのプロセッサに不可欠であり、供給不足が進行中である。AI向け高性能メモリ(HBM)は全量完売となっており、価格も上昇傾向が続く。そのため資金が集まった。
マイクロン株価は今年に入り約3倍となり、一時的にメタを時価総額で上回る場面もあった。投資家は半導体分野から撤退したのではなく、エヌビディアから調達元企業へと資金をシフトした。
2つ目の理由は、より本質的だ。エヌビディアの最大顧客が自社チップの開発を進めている。アルファベットは社内のAIチップを外部顧客向けに販売しており、アンソロピックは5年でおよそ2000億ドルをアルファベットに支出する計画がある。
要するに、エヌビディア製品を大量に購入してきた大手クラウド企業が、自社製造に乗り出すことで、必要なエヌビディアチップの量が減少している。シチズンスのアナリスト、アンドリュー・ブーン氏は、アルファベットのチップ事業が2026年の推定30億ドルから、2027年には250億ドル規模に拡大すると見積もる。
このため、エヌビディアが高い価格を維持できるかについて投資家は懐疑的である。この不安は、AI分野での支出急増とも関連し、ウォール街がエヌビディア株に慎重な理由となっている。
こうした複数の要因を踏まえると、これまでの動きが腑に落ちる。推奨評価は変わっていない。エヌビディアは依然としてストロング・バイ(強気買い)コンセンサスを維持し、過去1カ月で37件の買い推奨、1件のホールド、売りはゼロ。目標株価の平均は約309ドルとなっている。
ただし、天井は下がりつつある。6月1日、ウェルズ・ファーゴのアーロン・レイカーズ氏は、エヌビディアの目標株価を375ドルから315ドルに引き下げたが、買い推奨は維持した。一方、ウォール街の目標株価の状況を見ると、評価は好調を示すものの、買い手が一歩引き始めている。
この組み合わせが、単一データポイントのローテーションとなって表れている。アナリストは企業自体を引き続き高く評価し、格付けは維持する。一方、割高感には疑念が生まれ、目標株価は下げられる。目標引き下げが単独では違和感があっても、資金流出を見れば納得できる。
これは、エヌビディアが失速したことを意味しない。売上高は依然として急速に伸びている。ブラックウェルの需要も堅調で、予想株価収益率(PER)も約20倍と、他のAI銘柄と比べ割安である。
つまり、投資家は今後1年間に同社が生み出す利益1ドル当たり、およそ20ドルを支払う計算であり、トップAI銘柄としては低い水準。
ウェドブッシュは330ドルを目標株価とし、今回の売りは買い場と指摘する。
ここに緊張感がある。ファンダメンタルズは優れているが、資金の流れは逆方向であり、現状ではこの流れが株価を左右する。ネガティブな資金流出が続く限り、下げ局面ごとに買いよりも売りが入りやすい。
本格的な反転の初期シグナルは、「チャイキン・マネー・フロー」が再び買い越しへと転じることとなる。その時までは、エヌビディアは定番の半導体株ではなくなり、プロの投資家は他の銘柄を物色している。

