価格を確認して売りボタンを押しても、画面に表示されていた価格よりわずかに不利な価格で約定することがあります。
この差が先物取引におけるスリッページです。株式先物では注文サイズが大きくなるほどスリッページも拡大するため、10万ドルの注文が1万ドルの注文と同じように約定することはまずありません。
本ガイドでは、MEXCの株式先物に関する第三者の測定データをもとに、その差がどの程度なのか、そしてどう対処できるのかを解説します。
Key Takeaways
先物注文のスリッページとは、注文を出した時点で想定していた価格と、実際に約定した価格との差のことです。
MEXCの成行注文に関するFAQも同じ定義を用いており、原因として2つを挙げています。約定までの数ミリ秒の間に価格が動くこと、そして注文が大きく、注文板の複数の価格帯を食い尽くしてしまうことです。
このうち2つ目の原因はご自身でコントロールできるため、本記事ではこちらに焦点を当てます。
注文サイズによってスリッページが変わるのは、成行注文が1つの価格で約定することを保証されていないためです。
成行注文は、最も有利な価格から順に、板に並ぶ注文を価格帯ごとに消化していきます。
流動性の高いペアでの1万ドル程度の小さな注文であれば、最初の1〜2つの価格帯で約定しきることがあります。
一方、10万ドルの注文はさらに先の価格帯まで届く必要があるため、平均約定価格は気配値から離れていきます。
最良買気配と最良売気配に並ぶ注文が最良気配(touch)であり、表示された価格で約定するのはこれらの注文だけです。そのすぐ後ろに並ぶ数量が最良気配付近の板の厚み(near-touch depth)で、最良気配が消化されると、注文は次の価格帯、さらにその次の価格帯へと進んでいきます。
スリッページはどちらの方向にも発生します。気配値より有利な約定はプラスのスリッページ、不利な約定はマイナスのスリッページと呼ばれ、トレーダーの記憶に残るのは後者です。
成行の売り注文のスリッページを計算するには、注文を送信した時点で見ていた価格(通常は最良買気配)から平均約定価格を差し引き、その差をその気配値で割ります。買い注文の場合は、約定価格から気配値を差し引きます。
結果はパーセンテージで表すため、サイズの異なる注文同士を比較できます。
架空の例で考えてみましょう。最良買気配が100.00ドルで、成行の売り注文が平均99.95ドルで約定したとします。
差は0.05ドル、つまり気配値の0.05%であり、これがその注文のスリッページです。
1件の注文からわかるのは1つの数値だけです。取引所を評価するには数百件のデータが必要です。
スリッページの中央値は典型的な約定水準を示します。サンプルとなった注文の半数は中央値より小さいスリッページ、残りの半数はそれより大きいスリッページでした。
P90スリッページはテール(分布の裾)の状況を示します。10件中9件の注文はこの値より有利に約定し、1件はより不利に約定しました。
大半の約定が気配値付近で成立するために中央値が低く見える取引所でも、薄い板に当たった10件に1件の注文では不利な約定になることがあります。
TokenInsightのレポートもまさにこの点を指摘しており、注文サイズが大きくなるとテールでの執行リスクが大幅に高まるとしています。
両方の指標を確認し、取引規模が大きいほどP90を重視しましょう。
手数料を加味すると、P90水準の約定は10万ドルの取引にかかる総取引コストの計算も変えてしまいます。
TokenInsightが2026年7月29日から8月6日までの平日に測定したところ、MEXCの株式先物5ペアにおけるスリッページの中央値は、1万ドルの模擬売り注文で0.0008%〜0.0098%、10万ドルの注文で0.0112%〜0.0218%でした。
MEXCは、そのうち3ペアで、両方の注文サイズにおいてサンプル対象の取引所5社の中で最も低い中央値を記録しました。
これらの数値は、2026年8月26日付のTokenInsightの株式無期限先物市場レポート(Equity Perpetuals Market Report)によるもので、同レポートは株式先物5銘柄について中央集権型取引所5社を30分ごとにサンプリングしています。
1万ドルの注文では、すべての取引所で中央値が0.02%を下回り、P90が0.035%を超えた取引所はありませんでした。
MEXCはSKHYNIXUSDT、SOXLUSDT、SPCXUSDTで0.0008%〜0.0024%の中央値を記録してトップとなり、SNDKUSDTの0.0032%も首位にわずかに及ばない水準でした。
10万ドルの注文では、MEXCは同じ3ペアで0.0170%、0.0130%、0.0112%を記録してトップとなり、複数のペアで首位となった唯一の取引所でした。これら3ペアにおけるP90は0.0241%、0.0278%、0.0230%とサンプル中で最も低く、一方で複数の取引所のP90は0.06%を超えていました。
10万ドルの注文では、MEXCはINTCUSDTとSNDKUSDTではトップではありませんでした。両ペアのデータは下表に掲載しています。
| 株式先物 | 1万ドル 中央値 | 1万ドル P90 | 10万ドル 中央値 | 10万ドル P90 | MEXCの中央値はサンプル中で最低か |
| SPCXUSDT | 0.0008% | 0.0058% | 0.0112% | 0.0230% | はい(両サイズとも) |
| SOXLUSDT | 0.0022% | 0.0098% | 0.0130% | 0.0278% | はい(両サイズとも) |
| SKHYNIXUSDT | 0.0024% | 0.0085% | 0.0170% | 0.0241% | はい(両サイズとも) |
| INTCUSDT | 0.0098% | 0.0228% | 0.0179% | 0.0484% | いいえ |
| SNDKUSDT | 0.0032% | 0.0103% | 0.0218% | 0.0540% | いいえ |
模擬売り注文におけるMEXCのスリッページ中央値とP90(2026年7月29日〜8月6日の平日)。出典:TokenInsight「Equity Perpetuals Market Report」(2026年8月26日)。
BTC、ETH、銀の先物を含む、TokenInsightの各レポートにおけるMEXCの結果は、MEXCの流動性ページにまとめています。
注文板において「見たままの価格で約定する(what you see is what you get)」とは、画面に表示された価格がそのまま注文の約定価格になることを意味します。
これが成り立つのは、最良買気配または最良売気配に注文全体を吸収できるだけの注文が並んでおり、かつ約定までに価格が動かない場合に限られます。
TokenInsightは、この厚みを、市場価格から0.01%、0.05%、0.10%以内に並ぶ注文の流動性の中央値として測定しました。
最も狭い0.01%の範囲では、MEXCはサンプル対象の5ペア合計で累積中央値52万ドルの厚みを記録して1位となり、0.05%と0.10%の範囲では2位でした。
TokenInsightは、MEXCが最良気配の近くにより多くの流動性を集中させていると分析しており、これは同じサンプルで1万ドルの注文が気配値の近くで約定していたことと一致します。
大口で取引する前に、デプスチャートの読み方を確認しておきましょう。
MEXCでは、指値注文、注文の分割、サイズを大きくする前のデプスチャートの確認、適切な利確/損切り(TP/SL)モードの選択、取引の閑散とした時間帯の回避によって、スリッページを抑えることができます。
いずれも手数料は増えません。それぞれ、約定のスピードや確実性と引き換えに、価格をコントロールする方法です。
暗号資産取引のスリッページとは何ですか?
暗号資産取引のスリッページとは、注文を出した時点で想定していた価格と、実際に約定した価格との差のことです。
スリッページはなぜ発生するのですか?
スリッページは、注文を送信してから約定するまでの間に価格が動くことや、注文が大きく複数の価格帯を食い尽くしてしまうことによって発生します。
スリッページは手数料ですか?
スリッページは手数料ではありません。平均約定価格に織り込まれる価格差であり、取引所の取引手数料に上乗せされる形で発生します。
成行注文のスリッページを減らすには?
成行注文からスリッページを完全になくすことはできませんが、注文サイズを小さく抑える、注文を分割する、指値注文に切り替えるといった方法で減らすことができます。
週末はスリッページが大きくなりますか?
週末も取引が続く株式先物では、原資産の株式市場が休場で取引が細るため、スリッページが大きくなる可能性があります。MEXCでは取引時間が契約ごとに異なり、市場の休場中は注文のキャンセルと証拠金の追加しかできません。
P90スリッページとは何ですか?
P90スリッページとは、サンプルにおける90パーセンタイルの値のことです。10件中9件の注文はこれより小さいスリッページ、1件はより大きいスリッページだったことを意味し、テールリスクを測る指標となります。
株式先物のスリッページはどのくらいが普通ですか?
TokenInsightの2026年8月のサンプルでは、株式先物5銘柄の1万ドルの売り注文において、すべての取引所がスリッページの中央値を0.02%未満に抑えており、10万ドルでのMEXCの中央値は0.0112%〜0.0218%でした。
指値注文でもスリッページは発生しますか?
指値注文は指定した価格かそれより有利な価格でのみ約定するためスリッページは発生しませんが、約定しないまま残ることがあります。
画面に表示される価格は、注文板が守らなければならない約束です。そして注文が大きくなるほど、その約束を守るのは難しくなります。
TokenInsightの2026年8月のサンプルにおいて、MEXCの株式先物はこの約束をしっかり守り、1万ドルと10万ドルの両方で、5ペア中3ペアのスリッページ中央値でトップとなりました。
注文サイズはレバレッジ段階によっても上限が決まります。この点は、最新の表をもとに解説した株式先物のレバレッジ段階とポジション上限の記事で確認できます。
デプスチャートを確認し、その厚みに合わせて注文サイズを決め、MEXCの株式先物でご自身の目で数値を確かめてください。
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